Univalent Versatile Environment
Univalent Versatile Environment(略称「UVE」、旧称:Univalent GNU/Linux)は、新日本放送が開発するArch LinuxベースのLinuxディストリビューションである。
![]() UniFetchを実行した図(22.11 LXQt) | |
開発者 | 社団同人新日本放送 |
---|---|
系統 | Arch Linux |
開発状況 | 開発中 |
初版 | 2022年5月17日 |
最新安定版 | 23.09 / 2023年9月1日 |
アップデート方式 | Pacman |
パッケージ管理 | Pacman |
カーネル種別 | Realtime |
デスクトップ環境 | LXQt, Xfce, KDE Plasma, i3, Cinnamon, GNOME, MATE, Budgie |
ライセンス | 3条項BSDライセンス |
ウェブサイト |
https://w.atwiki.jp/univalent-ja/ (日本語公式サイト) https://sourceforge.net/projects/univalentgnulinux/ (配布ページ) |
概要[編集 | ソースを編集]
Univalentの名称は「一般的で、勇敢で、面白い(Universal, Valiant, and Entertaining)OS」に由来。また「1価」という意味もあり、これは「単一のソースコードリポジトリ」に繋がる。 開発の際Alter Linuxを参考にしたが、系統としてはAlterではなくArchである。またバージョン番号や「フレーバー」の概念など、Ubuntuから影響を受けたと思われる個所もある[注釈 1]。当初のコードネームは、OS本体は「秋映」、Archisoを改造した独自のISO作成ツール「UniVaISO」(開発中止)は「スイート」、UniVaISO用の設定ファイルは「ゴールド」であった。これは「信州りんご三兄弟」の名称に由来する。
バージョン23.09以降はRealtimeカーネルを採用しており、最重量であるGNOMEフレーバー「Gunivalent」でも必須のメモリ使用量が768メガバイトに抑えられている[注釈 2]
GNOME版を除きWindows風のユーザーインターフェースが採用されている[注釈 3]。また「Chaotic AUR」のリポジトリを標準で追加しており、そこにもないパッケージは独自のリポジトリで管理している。更には「Yay」や「Pamac」をも搭載しているため、Arch公式のリポジトリと相まって豊富なパッケージの利用ができる。
ライブ環境での日本語表示には対応していなかったが、2022年7月以降のリリースで修正された。また日本語入力はライブ環境から対応している[注釈 4]。
Neofetchにロゴの追加を申請したが開発休止中だったため[注釈 5][1]、非公式派生のUnifetch(後述)で対処した。その後2022年11月22日にArchey4にロゴが追加され[2]、日本初のArchey4にロゴが追加されたディストロの一つとなった[注釈 6]。
2022年12月15日よりパッケージの署名を開始[3]。未署名のリポジトリは2023年6月まで更新が続けられるが、以降は廃止される予定である。
23.05より、後述するDNFPacによって、DNFコマンドを擬似的に使用できるようになる。同年7月より名称を「Univalent Versatile Environment」に変更した[4]。
リリース[編集 | ソースを編集]
主なリリースは以下の通り[5]
ローリングリリースを採用しているため、大規模な更新がなく、パッケージは少しずつ断続的に更新される。その思想を反映し当初から作成した日付を記載していたが、正式リリースした版は年月のみの表記である。
リリースはUnivalent(LXQtフレーバー)を皮切りに、Xunivalent→Punivalent→Uni3valent→Cunivalent→Gunivalent→Munivalent→Budgivalent(かつてはUnitylent)の順に公開される。
不安定版[編集 | ソースを編集]
デスクトップ環境毎に散発的にリリースされる。なおBudgivalentは不安定番を一度も公開せずマスターアップした。
主なバージョン | リリース日 | 主な変更点 |
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2022.05.17-Alpha | 2022年5月17日 | Arch Linuxをベースにした初回リリース版。この頃はまだLXQt版のみの開発だった |
不明(ベータ版) | 2021年6月?日 | ベータ版。この時期にXfce版の開発が開始か。 |
2022.07.01-Gamma | 2021年7月1日 | 初のガンマ版(LXQt) |
22.08.05-Gamma5 | 2021年8月5日 | LXQt版最終ガンマ版 |
22.08.08-Gamma1 | 2021年8月8日 | Xfce版初のガンマ版。以降3度リリース |
22.11.05 | 2022年11月5日 | i3-wm及びCinnamon版のみ。前者はアルファ3版、後者はアルファ2版 |
22.12.26-Gamma1 | 2022年12月26日 | Unity 7.6を採用したフレーバー。 |
安定版[編集 | ソースを編集]
1カ月おきに公開される。この他ポイントリリースが公開される場合もある。
主なバージョン | リリース年月 | 主な変更点 |
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22.08 | 2022年8月 | 初の正式版 |
22.08.1 | 2022年8月 | LXQt版のみのリリース。 クリップボードマネージャーの挙動を修正 |
22.09 | 2022年9月 | 開発中のフレーバー含め、テキストエディターをLeafpadに統一 |
22.10 | 2022年10月 | 正式版にPlasmaが追加される Intel PRO/Wireless 2x00用ファームウェアが公式より削除されたのに伴い、インストールイメージへの同梱を終了。以降は独自リポジトリにてサポートを継続 NeofetchをUnifetchに差し替え |
22.11 | 2022年11月 | 「.pam_environment」廃止に伴う日本語入力の挙動を修正 ウイルス対策ソフト「ClamAV」の同梱を開始 |
22.12 | 2022年12月 | 22.11.2より引き続き「ClamAV」の同梱を中止 スタートメニューのアイコンがUVE独自に変更される メモ帳をL3afpadに変更 |
22.12.1 | 2022年12月 | 署名付きリポジトリの運用開始に伴う緊急更新。 「add-pacman-repository」を追加(詳細は後述) |
23.03 | 2023年3月 | ウェブブラウザーをFirefoxに変更。 |
23.06 | 2023年6月 | Fcitx5の問題を解消。 |
23.06.1 | 2023年6月 | USBからの起動時に正常にマウントされない問題を解消[6]。 |
23.07 | 2023年7月 | Uni3valentのみの公開。 |
23.08 | 2023年8月上旬 | マスターアップ1周年を記念した限定版。Unitylentの開発が終了し、Budgivalentと入れ替わる。 |
23.09 | 2023年9月1日 | カーネルをRealtime(linux-rt)に変更。またシステム自体は3条項BSDライセンスで再ライセンスされた。 |
フレーバー[編集 | ソースを編集]
Univalentでは以下のデスクトップ環境を利用できる。由来となった部分を太字で示した。
- Univalent - LXQtを採用。標準のデスクトップ環境。最初に開発され、22.08版にて安定。
- Xunivalent - Xfceを採用。LXQtとは異なりGTKコンポーネントを多く採用したフレーバー。中量級。22.08版にて安定。
- Punivalent - KDE Plasmaを採用中量級。ファイルマネージャーがPCManFM-Qtであったが、23.03にてDolphinになった。22.10版にて安定。
- Uni3valent - i3-wmを採用。当初はウェブアプリケーションの実行に重きを置いており、LibreOfficeやRhythmboxなどのソフトウェアは搭載していなかったが、23.07より方針が変更された。
- Cunivalent - Cinnamonを採用。重量級。Windows 7のようなUIと操作感を実現。
- Gunivalent - GNOMEを採用。拡張機能によりUbuntuのようなUIを実装。かつてはIMEにIbusを採用していた。
- Munivalent - MATEを採用。比較的軽量なGTKベースの環境。
- Budgivalent - Budgieを採用。重量級。他のデスクトップ環境に比べて加工は控えめ。
かつて存在したもの[編集 | ソースを編集]
- Unitylent - Unityを採用。かつてUbuntuに採用されていたデスクトップ環境。最重量だが、インストール直後の使用メモリは1ギガバイト以下である。23.06.1をもって廃止。
プリインストールソフトウェア[編集 | ソースを編集]
2023年4月時点、以下のソフトウェアが同梱されている。多くのパッケージはKamuriki Linuxと共通する。
- Firefox(ウェブブラウザー)
- Claws Mail(メールクライアント)
- LibreOffice(オフィススイート)
- VLC Media Player(動画再生ソフト)
- Rhythmbox(音楽再生ソフト)
- L3afpad(メモ帳)- GTK3対応版「Leafpad」。
- Pamac(ソフトウェアセンター)
また、日本語入力システムとしてAnthy Unicodeが搭載される(AURで利用可能)。
独自コンポーネント[編集 | ソースを編集]
UniFetch[編集 | ソースを編集]
UniFetchは、新日本放送が開発を行なうシステム情報表示ユーティリティである。2022年10月現在開発が停止していると思われるNeofetchからフォークして、22.10版から同梱される。1.0.2版よりAURにて利用可能になった(詳細)。Arch系以外のOSでも使用可能。
引数などの構文はNeofetchと同一であるが、以下のディストロのロゴが追加されている。
- Univalent Versatile Environment
- HamoniKR
- Kamuriki Linux
- Droidian
- NNLinux
他多数。
add-pacman-repository[編集 | ソースを編集]
add-pacman-repositoryはサードパーティーリポジトリの追加を補助する対話型シェルスクリプトである。 ユーザーは画面の指示に従ってリポジトリ名やGPG鍵などを簡単に追加できるため、(特に鍵の追加において)時間の短縮になりえる。
コマンドの名称自体はDebian系に搭載されているadd-apt-repositoryに似るが、操作や挙動はほぼ別である。例としてaptは外部リポジトリを「/etc/apt/sources.list.d」に配置するが、Pacmanでは「/etc/pacman.conf」に全て記述する[注釈 7]。
AURにて利用可能(詳細)。
DNFPac[編集 | ソースを編集]
DNFPacはaptpacから派生した、Arch Linux上でRed Hat系で用いられるdnf/yumコマンドを使用可能にしたシェルスクリプトである。ユーザーがdnfコマンドを使うと、Pacmanに変換されて実行される。Univalentには23.05で搭載された。
AURにて利用可能(詳細)。
Kamurikiとの関係[編集 | ソースを編集]
先述の通り、新日本放送ではDebianベースのKamuriki Linuxを開発しているため、そこから移行した際に支障のないよう「aptpac」が同梱された[注釈 8]。またプリインストールソフトウェアはKamurikiと共通するが、Wineについては本体ではなくインストールを自動化するスクリプトが搭載されている[7]。aptpacの詳細はAlter Linuxの当該項を参照。
なおライセンスは両者とも3条項BSDライセンスを採用する。
脚注[編集 | ソースを編集]
注釈[編集 | ソースを編集]
- ↑ 尤も開発元はUbuntuベースのOSを開発しているので当前と言えば当前である。
- ↑ フレーバーの比較 - Univalent Versatile Environment Project【8/31更新】 - atwiki(アットウィキ)
- ↑ i3wmも含まれるが、キーボードショートカットなどは他と大きく異なる。
- ↑ 開発元が同じKamurikiは遅れて1.4.4から対応
- ↑ 最新の更新は2021年12月10日
- ↑ もう1つは、UnivalentのLXQt版にいわゆる「萌え」テーマを適用した「Moevalent GNU/Linux」。開発元は同じく新日本放送。
- ↑ 実際は「/tmp/」ディレクトリ内にテキストファイルを作成し、確認後に「/etc/pacman.conf」に追記する仕組みである。
- ↑ 一方のKamurikiにもPacmanコマンドをDebian系で使用可能にした「pacapt」が同梱される。
出典[編集 | ソースを編集]
- ↑ dylanaraps/neofetch: 🖼️ A command-line system information tool written in bash 3.2+ | GitHub, 2022年10月7日閲覧
- ↑ Add Univalent and Moevalent logo by Jin-Asanami・Pull Request #125・HorlogeSkynet/archey4
- ↑ ニュース: 署名付きリポジトリ運用開始のお知らせ - Univalent GNU/Linux - OSDN
- ↑ News/20230621 - Univalent Versatile Environment Project【6/29更新】 - atwiki(アットウィキ)(2023年7月3日閲覧)
- ↑ ダウンロードファイル一覧 - Univalent GNU/Linux - OSDN (2022年10月7日閲覧)
- ↑ リリースノート/23.06.1 - Univalent Versatile Environment Project - atwiki(アットウィキ)(2023年7月3日閲覧)
- ↑ univalent-tools/usr at main · njb-fm/univalent-tools | GitHub, 2022年10月7日閲覧)
関連項目[編集 | ソースを編集]
- Arch Linux
- Kamuriki Linux - 開発元が同じディストリビューション。
外部リンク[編集 | ソースを編集]
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